私の事務所は設計と施工を一環で行なっています。設計事務所というよりは工務店に近い業態だと思います。ですから、名称も設計工房としています。
自作自演なので何かと効率がよく、コストもシビアに管理できるのでローコストを標榜している私にとっては都合の好い体制と思っています。
しかし、コストや施工性を優先する余り、デザインや納まりを無難に考えがちになるので、たまには他の人が設計した住宅の施工も手掛け、勉強させていただくこともあります。
そんなことで、最近2件ほど、建築家と称する人の手掛けた設計を見積もる機会がありました。
しかし、その予定工事費を聞いて驚きです。建物規模や仕様、納まりからは到底実現しそうもない金額なのです。
一方の物件は施工面積28坪で工事予算1800万円です。単純な坪単価ですと60万強ですから無理な予算ではないように思われます。しかし、平面が三角形の組み合わせの上に、敷地が5Mのよう壁上に位置します。おまけに設計屋さんお得意のコリに凝った納まり?が随所にちりばめてあります。外壁の仕上げが5種類の素材で8パターン。建具がガラス工事を含め全部で61箇所、内既製品は21箇所、他は全てオーダー品。照明器具が41箇所。他にも住宅規模では使わないような上級仕様が特記事項に盛り込まれています。
もう一方は床面積70坪で工事予算3500万円です。こちらも単純な坪単価で見ますと50万円ですから実現しそうですが、完全な2世帯住宅で玄関はもちろん水廻りも全て別々です。おまけに建て替えですから解体費用も含まれます。中庭を挟んだ変形コの字型プランで屋根の棟が5箇所もあり、サッシ工事だけでも規格品を使えば1棟分は賄えそうな1階床から2階天井まで通しのカーテンウォールが2箇所もあります。
この2つの物件、どんな根拠で仕様や設備を決めたかは敢えて聞きませんでしたが、工事費の根拠など最初からなかったようです。
単純に坪単価で押さえ、「見積り合せ」と称して数社から見積を取り、工事費のオーバー分は仕様の変更や、値引き、挙句の果ては施主に追加予算を出させ、辻褄を合わせる設計手法のようです。
そしてそれを自分の手柄のようにしてしまう、こんな設計を平気で行なう建築家と称する先生が多いのもこの業界の特徴です。
建築家の先生、「プロなんですからコスト実現度もしっかり把握しましょうね」と思った出来事でした。
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